Beyond Meat(ビヨンドミート)株は買うべきか!?

2019年にIPOをしたBeyond Meat(ビヨンドミート)。IPO時は25ドルだった株価が、一時は235ドルまで上がり、大きな注目を集めました。2020/ 12/31時点では、125ドルで推移しており、最高値から約半分の水準です。

(Source:Google)

Beyond Meatは食肉に代わる植物性代替肉を提供している企業です。提供している商品は、ビヨンドバーガー、ビヨンドソーセージ、ビヨンドビーフクランブルズ、ビヨンドチキンストリップと幅広く、アメリカのSafeway, Walmart, Target等のスーパーマーケットやKFCやStarbucksでも購入が可能です。残念ながら日本のスーパーではまだ買えません。東京港区にある海外からの輸入品が多いスーパーを探してみましたが、そこでも見つかりませんでした。。

Beyond Meatがけん引する植物性代替肉市場は、環境、健康、動物愛護の観点で意識が高いミレニアム層から強い支持を得ており、今後長期にわたって成長する分野としての期待が大きいです。また、Bill Gates氏や世界最大食品企業のTyson Foodsが主要株主な点も心強いです。 

そのBeyond Meat株に投資すべきか見ていきましょう!投資は自己責任でお願いします!

Contents

Beyond Meatが解決しようとしている課題

2050年に世界人口が100億人になると言われており、現在の75億人から33%増加する試算です。それに対して、世界食肉畜産需要は2010年から2050年にかけて、2.43億トンから3.80億トンへ60%増加すると言われています(ソース:農林水産省)。食肉畜産需要増が人口成長のペースを上回っているのは、一人当たりの食肉需要が増えることを意味しており、特に低所得国において顕著な需要増が予測されています。

ネットフリック「食肉の未来」によると、世界では10億頭の豚、10億頭の羊、15億頭の牛、230億頭の鶏が食肉畜産用途で飼養されており、タンパク質、ミネラル、ビタミンといった栄養源になっています。特にビタミンB12は他では摂取しづらい栄養素です。また、食肉に含まれる鉄分は植物性の鉄分よりも体が吸収しやすいというメリットもあります。

一方で、動物性食品は、植物性食品と比較して、圧倒的に土地、水を使い、多くの温室効果ガスを排出します。そのため、食肉畜産需要が増加することイコール環境問題が悪化します。Beyond Meatの2020Q3 Reportによると、全世界の農地の78%が家畜飼育用に使用されており、世界で使うの29%が家畜飼育用だそうです。それに加え、家畜飼育は世界の温室効果ガス排出量の18%-51%を占めているそうです。

また、ネットフリック「食肉の未来」によると、もし低所得国の人口が高所得国と同じ量の食肉を消費した場合、世界中の住居可能な土地を畜産に使用しても、土地が足りなくなるそうです。既に家畜は狭いスペースに押し込まれ、ビタミン剤や抗生物質で成長スピードを最大限に早めているため、これ以上の効率化を図るのは難しいとのこと。例えば、鶏は1957年と比較して、4-5倍大きくなっているそうです。恐ろしいですね。。。

このような状況を受けて、今後の人口増や食生活の変化を支えるサステイナブルなたんぱく質の供給が必須になっています。この課題をBeyond Meatは植物性代替肉を普及させることで解決しようとしています。

Beyond Burger の優位性 vs 同じ大きさの牛肉バーガー

環境面

    • 土地利用:93%カット
    • 水使用量:99%カット
    • 温室効果ガス:90%カット
    • エネルギー使用量:46%カット

栄養面

    • タンパク質:同等レベル
    • 飽和脂肪:約半分
    • コレステロール:0 (一方でナトリウムの含有量は5倍)

動物愛護面

    • 動物屠殺0

植物性代替肉の普及に向けてBeyond Meatが抱える課題

上記の通り環境配慮、栄養、動物愛護面で食肉を上回ったとしても、肝心な味と値段で勝らないと大きくスケールすることはできませんよね。Vegetarian Timesによると、米国にベジタリアンは730万人しかおらず、人口に対する割合は2.2%にとどまります。ビーガンに至っては730万人の内数で、100万人とのことです。非ベジタリアン・ビーガンの97.8%の人口にどう普及させるかが今後の成長のカギですね。

私自身、食肉が好きで毎食何かしらの食肉を食べています。もしBeyond Meatが食肉と同じ味を再現できて、値段も同水準であれば確実に乗り換えると思います。一方で、値段と味が揃わないと買わないと思います。その場合、食肉の代替食品として他にも納豆、豆腐、枝豆でたんぱく質を摂取できるので、そっちを選ぶと思いますね。

残念ながらBeyond Meatを食べたことがないため、味はわかりませんが、色々とリサーチしたところ、食肉と同じ味がしたと言う人はまだ少ないようです。競合他社のImpossible Foodsの植物性代替肉の方がおいしいと言っている人の方が多いように見受けられます。ちなみにImpossible Foodsは上場していません。

2社の違いは、Beyond Meatはエンドウ豆と米ベース、遺伝子組み換えなし、グルテンフリー、Impossible Foodsは大豆ベース、遺伝子組み換えありです。グルテンフリーと遺伝子組み換えなしという点で、Beyond Meatの方がビジネスをスケールしやすいはずです。

今後味の研究を続け、改善出来たときにより一気に成長が進むかもしれないですね!

価格に関しては、2020 Q3 時点でBeyond Burgerの1ポンド(約450グラム) あたりの価格が去年から7%下がり5.33ドルになったそうです。これは、牛ひき肉の4.89ドル(Source: U.S. Department of Agriculture)にだいぶ近づいてきています。安くなった時に売上に更に拍車がかかるかもしれません!

Beyond Meatの植物代替肉市場シェアと食肉市場シェア

Grand View Researchは、2019年に33億ドルの売上だった世界植物代替肉市場は、2027年までに毎年平均19.4%伸びて、138億ドルに成長すると予測しています。Beyond Meatの2019年の売上は2.98億ドルなので、9.0%のシェアだった計算です。2020年の1-9月でBeyond Meatの売上は対昨年度比53%伸びていますので、植物代替肉市場の19.4%の上回っており、シェアを上げていることになります。

視野を広げて世界の食肉市場規模を見てみると、なんと14兆ドルもあります!植物代替肉市場はその0.2%にしか値しません、Beyond Meatの売上に至っては0.02%にしか及びません。植物代替肉市場も、Beyond Meatもまだまだ成長余地があることを示しています。

Beyond Meatの2017-2020年の業績

売上:Beyond Meatの売上は、2018年に対昨年度比170%の成長率、2019年に239%、2020年Q1-3期に53%と、植物性代替肉市場の成長率を常に上回る高成長率を維持しています。2020年Q1-3期に成長率が大きく減速した要因は、コロナでRestaurant and Food Service(主にレストランの売上)が大打撃を受けマイナス成長になってしまったことが挙げられています。

もしコロナが終わり人々が以前通り外食できるようになると、レストラン売上は回復するかもしれませんが、同時に、Retail(主にスーパー)の売上成長もコロナによる自粛影響で通常以上に上がっていることを否定できないと思います。

以下2020Q1-3期の対昨年度比較です。ご覧の通り、Retailは好調で対昨年度比117%で伸びているものの、Restaurantに関しては、マイナス成長になってしまっています。

利益率:今のところ赤字続きですが、どんどん利益率を改善してきています。2017年は-93%だったのを、2020Q1-3では-9%まで改善してきています。これから更に売上を上げていけば、黒字転換ができそうですね!2020Q1-3は2019と比較すると-4%から-9%に悪化していますが、長期的な成長のための投資拡大や、コロナ関連のコスト増が挙げられています。

以下にBeyond Meatの2017年から2020年Q1-3の売上(Sales)と利益率(Net Income%)をまとめました。

Beyond Meatのバリュエーション vs Tyson Foods & Kellogg

売上: Beyond MeatのMarket Cap(時価総額)は、7,833百万ドルで、直近12か月分の売上の19.4倍で推移しています(2020/12/31時点)。要するに、19年間の売上分の価値を投資家が置いていることになります。この19.4倍のMarket Cap/Sales(株価売上高倍率)を、主に食肉を売る世界最大の食品企業であるTyson Foodsの0.54倍、世界最大級の植物ベースの加工食品企業であるKelloggの1.58倍と比較すると、Beyond Meatが非常に割高に見えますね。

Tyson FoodsとKelloggは両社ともに植物性代替肉商品を販売しており、Beyond Meatの競合になります。両社とも長い歴史を持つ大企業ですが、売上成長率が一桁台しかありません。それに対してBeyond Meatの成長率は高く、その成長ペースが維持されることがBeyond Meatの株価に織り込まれているのでしょう。

利益率: Beyond Meatはまだ赤字なのでP/E Ratio(株価収益率)がマイナスになってしまいますが、P/E Ratioが黒字になると、時価総額が何年分の利益に値するかがわかる指標です。Tyson FoodsやKelloggは黒字企業で、P/E Ratioはそれぞれ10.9と17.1です。それぞれの時価総額は10.9年間分の利益と17.1年間分の利益と同等になります。仮にBeyond Meatの現行の利益率がTyson FoodsとKelloggの平均をとった7.1%((4.98%+9.23%)/2)だった場合、Beyond MeatのP/E Ratioは、なんと273倍になります! 2社のP/E Ratioの平均をとった14 ((10.9+17.1)/2)にまで下げるには、Beyond Meatの売上を現在の19.5倍にしなければなりません。。。

Beyond Meatの現在の株価は妥当か

私はだいぶ割高だと思います。上記の通り、Beyond Meatが売上規模を19.5倍にし、利益率を現行の-7%から+7.1%に転換できれば、Tyson FoodsとKelloggのバリュエーションと同等レベルの割高さ/割安さになります。そのためには、2027年までの7年間、毎年2020年Q1-3と同等の売上成長率である+52.9%のペースで伸ばさないとなりません。そうすると2027年の売上規模が7,862百万ドルに達し、植物性代替肉市場のシェアは現行の10%から57%、食肉市場のシェアは現行の0.02%から0.6%のシェアになる計算です。以下にBeyond Meatの2027年までの売上の推移とそれぞれのシェアを記載しました。

Tyson Foods, Kelloggに加え、Kroger、Nestle、Kraft Heinzといった世界大企業も植物性代替肉市場に参入してきており、競争はこれからどんどん激しくなる中、Beyond Meatがシェアを伸ばし続けるのは難しいと思います。そんな中、Beyond Meatの株価は、少しでも売上成長や利益率の改善が遅れてしまうと、現行のバリュエーションが更に割高になってしまい、それに伴い株価が大きく下がるリスクがあります。

Beyond Meatは早くから植物性代替肉に参入していたので、その分先行者利益はあります。しかし、これらの世界大企業は、1)資金力があり商品開発やマーケティングにより多くの金額を投資できる、2) 消費者に信頼されているブランド確立しているので、新商品販売時に試してもらいやすい、3)既にスーパーの棚を多く確保している、4)販路への物流網を確立しており大量の物量を運んでいるため、物流コストが安いという点から、Beyond Meatより有利になります。

上記の理由から、現時点の株価なら、私ならBeyond MeatよりTysonやKelloggといった大企業で、今後代替肉市場に徹底的に投資する姿勢を見せている企業の株の方が安心して買えます。そのような大企業は既に他の食品で膨大な売上を築き上げているので、代替肉市場の売上を伸ばしたところで、会社全体の業績への影響は限定的というデメリットもありますが。。