コロナショックで米国株は買いか②ー株価収益率、売上成長率、利益率を用いて検証

前回の記事:コロナショックで米国株は買いか①ー下落幅と今後の展望から推測では、米国株優良8銘柄における1)過去一年間の最高値からのコロナショックによる下落率と、2)コロナ収束後の企業業績のざっくりとした見通しの2点をベースに、株価が割安か否かを私なりに判断してみた。しかし、そもそもコロナショック前につけた直近一年間の最高値が割高であった場合、コロナショックで適正値に戻っただけとも捉えられる。今回はその検証をすべく、株価収益率、売上成長率、利益率トレンドを用いて解説する(投資は自己責任でお願い致します)。

米国株優良8銘柄の株価収益率比較:

米国株8銘柄の株価収益率を比較してみたい(株価収益率の解説はここをクリック)。以下のデータは、2020年4月4日時点の時価総額を2019年の純利益で割ったものである。株価収益率が高いほど(割高)赤色、低いほど(割安)緑色になっている。 一番高いアマゾンが約82倍なのに対して、一番低いディズニーは約17倍と5倍の差が生じている。

8銘柄は属する業界が異なるため、単純比較はできないが、過去5年間の売上成長率(Revenue YoY Growth %)と、純利益率(Net Profit Margin%)の2つを用いることで、現在の株価収益率の妥当性をより深く理解できる。

売上成長率比較:

まずは売上成長率から。2015年から2019年までの対前年比売上成長率を並べてみた。CAGRとは年平均成長率である。

アリババが53%と一番高く、ディズニーが7.3%と一番低い。時代の流れをキャプチャーし成長段階にあるEコマース企業と、圧倒的なブランド力で長年にわたって人々を魅了し、シェアを伸ばし切った企業との違いだろうか。

純利益率が一定とした場合、売り上げが伸びれば伸びるほど、純利益額が上昇し(例①)、株価収益率は下がる(例②)。

例① 売上:100->120 & 純利益率:10%->10%の場合、純利益額:100*10%=10->120*10%=12。結果、純利益額は10から12に上昇する。

例② 時価総額:100->100 & 純利益額:10->12の場合、株価収益率:100/10=10->100/12=8。 結果、株価収益率は10から8に下落する。

もし各企業の売上が過去5年間の年平均成長率を維持して2025年まで成長するとどうなるだろう。2019年の売上を1とした場合、売上成長率が一番高いアリババで2025年に現在の12.8倍、売上成長率が一番低いディズニーで1.5倍になる。

そもそも売上が大きくなるにつれて、企業は成長率を維持することが難しくなる。そのため、上記は非現実的な予測だが、高成長企業と低成長企業の間で年数を経ることで、どの程度売上に差がつくのかを理解するのに使ってほしい。同様に、この売上成長率の差がどう株価収益率に影響を与えるかを見てみると、以下のようになる。もし時価総額と純利益率が同じだった場合である。こちらも非現実的な数字だと心得ておいてほしい。

アマゾン、アリババ、グーグル、フェースブックといった高成長企業は、株価収益率が1倍を下回る水準まで下がっている。すなわち、1年間分の純利益額よりも、会社の価値が低く評価されているということだ。一方で、アップル、マイクロソフト、ディズニー、スターバックスといった低成長企業は、下げ幅は限定的で、3-6倍の水準に下がっている。限定的とはいえ、現状の株価収益率の16-28倍よりも大幅に下がっている。

仮に、各企業が売上成長率と利益率を維持できて、純利益額を上記の通り伸ばせたとしよう。その場合は、時価総額及びに株価も上がるはずだ。なぜなら、これらの優良企業が、0-6年間分の純利益額で買えるほどの割安の企業価値になるとは考えられないからだ。ブランドが確立して、ユーザーから支持を得ているブランドほど、倒産リスクは低い。売上も安泰だし、資金面でも信用を使って低コストでの借り入れができる。普通に考えて20-30年くらいは存続すると考えがちなので、株価収益率が20-30倍になる。

純利益率比較:

次に純利益率の見てみる。 2015年から2019年までの 過去5年間実績と、5年間の平均値(Average)を記載した。

フェースブックが32.4%と一番高く、アマゾンが2.5%と一番低い。 20億人以上のユーザーデータベースを活用し、オンライン広告事業を手掛ける事業と、数多くの巨大な物流センターを有し、かつ薄利多売で、地球上のありとあらゆる商品を扱うEコマースとのビジネスモデルの違いだろうか。

売上が一定とした場合、利益率が上がれば上がるほど、純利益額が上昇し(例①)、株価収益率は下がる(例②)。

例① 売上:100->100 & 純利益率:10%->12%の場合、純利益額:100*10%=10->100*12%=12。結果、純利益額は10から12に上昇する。

例② 時価総額:100->100 & 純利益額:10->12の場合、株価収益率:100/10=10->100/12=8。 結果、株価収益率は10から8に下落する。

各社の純利益率の過去5年間の推移を見ていて、一番ポテンシャルを感じるのは、アマゾンだ。その他の企業は安定しているか、あるいはでこぼこしていて、コンスタントに伸ばしているようには見えない。

アマゾンは、2015年の0.6%から2019年の4.1%までコンスタントに伸ばしている。しかも純利益率が低い分、1%純利益率を伸ばした時の倍率が高くなる(1%->2%の場合2%/1%=2倍だが、20%->21%の場合、21%/20%=1.05倍にしかならない)。このおかげで、仮に2025年までに現状の4.1%から6.2%に伸ばしただけで純利益が1.5倍になる。それに加えて売上が4倍になったとしたら、両方合わせて4*1.5=6倍も純利益が増えることになる。

このように、目先で株価が上がっているか/下がっているかだけでなく、各企業の売上と利益率の推移をみることで、より深く株の適正価格を理解できる。

もう少し現実的な株価予想:

上記の知識と情報を活かして、もう少し現実的な予測を立てるとしたらどうなるだろうか。以下の条件でシミュレーションしてみる。

  • 2025の株価収益率は全銘柄20倍になる(米国株の平均的な水準)。
  • 2025までの売上年間平均成長率は過去5年間のそれの半分になる。
  • 純利益率は過去5年間の平均と同水準。しかし、アマゾンのみ1.5倍になる。

果たして2025年の株価予測はどうなるのか。以下株価に影響する各要素の解説。

  • PE Adj:2025年の株価収益率を20倍にするために必要な調整。
  • X Revenue:1/2の売上年間平均成長率で、売上が2025年に何倍になるか。
  • X Net Profit Margin:純利益率が2025年に何倍になるか。
  • Stock Price FCST:株価が2025年に何倍になるか。(上記3つをかけた数字)

結果は、アマゾンとマイクロソフトは、株価か0.8-0.9倍と現状よりも下落する予測になる。両社ともに現状の株価収益率が約82倍と28倍と高く、2025年までにそれを20倍に下げるためのマイナス調整が必要で、その調整をオフセットできる売上成長と利益率改善がなかった。

一方で、アリババ、フェースブック、グーグルについては、株価が1.6倍から4倍まで伸びる予測になる。3社ともに、現状の株価収益率は2025年の20倍と既に近しい水準でほぼ調整が必要なかったことと、高い売上成長率が株価を押し上げるドライバーになった。

アップル、ディズニー、スターバックスについては、株価が1.3倍から1.5倍に上がる予測になっている。3社ともに、現状の株価収益率は2025年の20倍と同水準か低い水準になっていたことで、プラス調整が入った。それに加えて、低成長ではあるものの、売り上げの伸びで更にプラスに転じた。

上記の分析を受けて、私は予測上株価が一番伸びるアリババ、フェースブック、グーグル株を買った。

株価収益率(Price Earning Ratio)とは:

株価収益率は、時価総額/年間純利益で求められる。

まずは、時価総額について説明する。時価総額=株価×発行済株式数。要するに投資家がつける企業価値と思っていただきたい。企業の業績予測が改善すると、株が買われ、それに伴い株価が上がり、時価総額も連動して上昇する。業績予測が悪化すると、その逆が起きる。

次に、年間純利益について説明する。1年間分の売り上げから、全ての経費を引き、残った利益に対して税金を払った後に残る、一年間分の最終利益を指している。

上記の2点を踏まえると、株価収益率=企業価値/1年間分の最終利益と表すことができる。言い換えると、株価収益率とは、投資家が何年間分の最終利益を企業価値と見なしているかになる。

では、簡単な例を挙げてみたい。時価総額が1億円の会社が、年間2千万円の純利益を出していたら、株価収益率は、1億円/2千万円=5になる。即ち、投資家は5年間分の最終利益をその企業の価値として評価していることになる。

注意しておきたいのが、結果として同じ最終利益額をあげている同業他社でも、時価総額が大きく異なることがある。例えば、企業A、B、Cの3社が以下の通りの利益額で推移していたとすると、あなたはどの企業に一番投資したいだろうか。

恐らく、毎年利益額を伸ばしている企業Bではないだろうか。3社共に直近一年間は同じ利益額を稼いでいても、過去実績の傾向とそこから推測する今後の展望を加味して、株の需要が決まるため、株価と時価総額が異なってくる。

企業Bの場合は、今後も同じペースでの利益額アップを織り込んだ投資家が株を買い、時価総額が1億円以上になる傾向にある。仮に時価総額が2億円になると、株価収益率は、2億円/2千万円=10倍になる。そのような背景を知らずに、企業Bの株価収益率(10倍)を企業Aのそれ(5倍)と比較してしまうと、割高に思えるかもしれない。

一方で、毎年利益額が下落している企業C株の需要は落ちる。仮に、時価総額が5千万円になったとすると、株価収益率は2.5倍になる。以下にまとめた。

さて、企業Aの10倍、企業Bの5倍、企業Cの2.5倍。どれが一番割安なのだろうか。どの株も過去実績とそこから推測する今後の展望が織り込まれている今、なかなか判断が難しいのではないだろうか。全企業で株価収益率が5倍だった時は、過去の実績から今後の利益額アップが一番見込める企業Bが一番割安に見えた。しかし、その結果として、企業B株に需要が集中して株価が上がり、企業Bの株価収益率が5倍から10倍に上がってしまった。株価収益率は、このような動きすると思っておいてほしい。

上記に記載した業績トレンドの影響と合わせて理解いただきたいのが、株価収益率は、業界によって平均値が異なる傾向にある。そのため、各企業の株価収益率の妥当性を理解するには、同業の競合他社と比較するのが良い。全般的な株価収益率の平均値は、一般的な日本の上場企業で15倍、米国企業だと15-20倍、米国テクノロジー系を扱うナスダック総合指数だと30倍近くに跳ね上がる。記事に戻る場合はここをクリック

 

 

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